糖尿病、生活習慣病の専門医院 松本市・多田内科医院

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真珠の耳飾の少女に会いたい

4月29日
 時差のせいで朝が早い。窓の外を見ればすぐ下には細い運河があり、運河に沿って緑や褐色の三角形の屋根を持つ伝統的な建物が並んでいた。昨日から気になっていた“キョエー、キョエー”という音が海鳥の鳴き声であることに気がついた。ベッドから見上げる窓は雲のない青空で、部屋の白壁に射す日脚に一瞬、鳥影が過ぎ去っていく。
 10時、まこと君が迎えに来た。今日はクレラー・ミュラー美術館に行く予定なり。ふつうなら、電車とバスを乗り継いで2時間半かかるところだが、車なら1時間半で着くという。しかし、まこと君は車が運転できないので、親友のヤン君がまこと君のために運転してくれるらしい。そのヤン君、190センチのスリムな大男で、ブロンドの長めの髪を風になびかせて車に肘をついて立っていた。そのハンサムなこと。高く鋭い鼻の先が映画俳優のようにツンと形よく尖っている。爽やか青年と映画俳優に挟まれて、限局性体幹脂肪蓄積を合併した慢性特発性進行型猫背症候群のたそがれおやじは、いったいどうすればいいの。
 デ・ホーヘ・フェルウエ国立公園に着き、車から出ると野鳥の声のシャワーであった。入口には数百台の自転車が置いてあった。ここから美術館まで約3キロもあるので、ほとんどの人はサイクリングする。「ジムで5キロぐらいジョギングしているし、今日は元気があるから走っていこうかなあ」2人の表情がわずかにこわばってきているので面白くなり、「もちろん付き合ってくれるよねえ」「・・・・」この2人、わたしが冗談を言う人間だとはまだ思ってもいないらしい。新緑の木立の小道を、野鳥の声に満ちた春風に吹かれながらのサイクリングはまことに気持ちが良い。気分はいかがと聞かれて、「ゼッコーチョー」自転車にはブレーキがなく不思議に思ったが、ペダルを逆回転させるとブレーキになる仕組みであった。クレラー・ミュラー美術館は建物の佇まいも周囲の風景も美しい美術館であった。ゴッホやピカソなどの名画がごろごろしている。しかも、教科書に載っているような有名な絵画の前には誰もいない。もし日本だったら、「絵の前で立ち止まらないでくださーい」などと拡声器で脅されて、後ろの人からひじ打ちを食らったりするであろう。特別展には珍しいものがあった。2メートルぐらいの人の形をしたオブジェがすべて玉虫からできていた。数千匹の玉虫である。びっくりしましたねえ。その先に進んで、さらに驚愕した。床いっぱいに作られた10メートル四方の作品がすべて玉虫によるものだったのだ。数億匹の玉虫である。わたしはひざが震えめまいに襲われたね。実は、わたしは玉虫信仰崇拝主義者なのです。わたしは、玉虫がこの世で一番美しいと信じているのだ。わたしの最も大事な宝箱の一番奥に、蓼科高原の柏木博物館で手に入れた一匹の玉虫が入っている。盗まれるといけないので、誰にも秘密にしている。ときどき真夜中に起きてそれを取り出して光にかざし妖しく笑う姿は、誰にも知られていないはずだ。わたしにはそれほど貴重な玉虫なのに、いったいこのありさまは・・・、とほほ(べそをかいている)。
 夕食はアムス郊外のOuderkerk(古い教会)という村にあるレストランBrasserie Paardenburgで。運河に面した風光明媚な店である。欧米では料理を分け合って食べる習慣はない。そこで、わたしは高らかに宣言した。「前菜、主菜から好きなものを選んでくださーい。しかし、自分に所有権はありません。すべての料理を厳格に正確に厳粛に粛々と3等分しまーす」と。これなら1人で6種類の料理が味わえる。これはわたしのいつものやり方である。ただし、気に入った人とだけしかやらない。グースレバー、スモークサーモン、ツナタルタル、牛フィレ、地元産のポーク、タラのソテー、いづれもうまい。Lekker(美味しい)を連発する。

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