糖尿病、生活習慣病の専門医院 松本市・多田内科医院

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ドン・ジョバンニになるぞ!

第4回
12月28日
朝食後、ゆっくりとシャワーを浴び、ベッドで読みかけの小説をパラパラやる。一人旅は何をしてもよいのだ。たとえ朝からビールを飲んで酔っ払っても、文句を言う人は誰もいない。ストレッカー氏から「昨夜はごめんごめん」という電話が来た。今日はニューイヤーコンサートのリハーサルがあるが、今年は指揮者が神経質になっており、誰も中に入れないので、残念ながら見せるわけにはいかなくなったという。これもごめんごめんと、謝ってばかりいる。
11時、真千さん来る。ザッハーホテルのカフェで軽い昼食にする。ソーセージ、オープンサンド、コンソメスープを分けて食べ、わたしはいつものようにメランジュ2杯。ちょっと待てよ、ここのソーセージはインペリアルホテルのカフェよりもうまいぞ。
トラムに乗ってべルヴェデーレ宮殿へ行く。ここにはクリムトの絵をたくさん置いている美術館もある。玄関に女性の大きなスフィンクスが鎮座していたので、記念写真を撮る。「次はオッパイを触ってくださーい」「はいよ」「はい、次は乳首にキスしてくださーい」「こら、そんなことはできん!」「じゃあ、私が先にやりますから、次は先生ですよ」「ウーム、まあいいだろう」完全にペースをにぎられている。ニューイヤーコンサートのチケットを取ってくれた真千さんの知人がここへやってきて、チケットをわたしに渡すことになっているという。「真千さんが預かってくれればよかったのに」「そんな高価なものは怖くて預かれません」「じゃあ、ホテルに頼めばよかったのに」「ホテルでも預からないと思います。なにしろ今、世界中で一番貴重なチケットですから」たいそう大げさなことを言っているようだが、実際、大げさには聞こえないのである。受け取ったチケットを見ると前から7列目の中央寄りであった。チケットを持っていた手が少し震えた。
今日はおみやげを買う日である。まず、グラーベン通りのアルトマン&キューネで小粒の美しいチョコレートを購入。あとは、娘に音楽関連の小物さえ買えば、それで終わる。ウイーンワールドという店と、楽譜店で有名なトブリンガーという店を覗く。娘の喜びそうな小物が、あーるある。ペン、便せん、ノート、マグネット、ポスターなど、こんなもので喜ぶのだからたわいもない。B5タイプのベートーベン交響曲7番の楽譜(別に読めないが)と、握るところに銀がはめ込んである立派な指揮棒は自分用に。「これでおみやげは大抵すんだが、もう一人大事な人がいる。なにかヘンなものはないかなあ」「?」「つまり、少しばかばかしいもので、かわっているもの」「どなたにあげるんですか」「ちょっとカエルみたいな人に」「?」デパートのおもちゃ売り場に行くと、笑い転げている間抜け顔の犬がいた。笑いながらごろごろと左右に転がっているのである。これを見て2人とも笑いが止まらなくなり九の字になって苦しがっていたのだが、周りの人々は何の関心も示さずツンとして通り過ぎていく。不思議である。
夕食は郊外にある真千さんの行きつけの店に連れて行ってもらった。Rudis Beislという気どらない小ていなレストラン。白アスパラガスのスープ、スズキのソテー、牛ステーキの上に玉ねぎフライ山盛りどっさり、野菜サラダ、チーズ。今晩は演奏会がないので、飲むしかない。生ビール2杯、白ワイングラス、そして赤ワインボトルをきっちりと空けた。真千さんの身の上話をうまく聞き出せたが、こっちはそれ以上のことを言わされたような気がする。

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