糖尿病、生活習慣病の専門医院　松本市・多田内科医院

　なんと、安曇野にパリの店があった。実際にはパリの店ではないが、パリの雰囲気が漂うという意味である。私はたった一度だけパリに行ったことがあるが、シテ島の小鳥市を見た後、ノートルダム寺院の方へぶらぶら歩いて行くとクレープの店がたくさん並ぶ小路に迷い込んだ。ちょうど昼時だったので、これらの店を覗いて廻っていたところ、ある店の前で待っている中年男が「この店のガレットは最高だよ」と教えてくれたので、その人の後ろに並んだのである。初めてガレットを食べた味は私にとってパリの味として深く思い出に残っている。そんなパリの味と雰囲気を再現してくれるのがブレ・ノワールだ。しかも、パリの店よりもずっときれいでくつろげる。店は林の中に建ち、玄関の前にしばらくの間佇んでいると、野鳥の声がどこからともなく響いてきて、ヤマガラやシジュウカラなどが不意に目の前に現れる。
　たくさんの種類のガレットとセットメニューが用意されており、どれにしようかなと迷うこと甚だしく、いつまでたっても決められない。しかし結局は、いつも“食いしん坊のお嬢さん”というガレットを注文する。これは、卵、ハム、チーズのガレットの上にサラダやクルミが載っているのもので、きのこのソテイーをトッピングしてもらうのはいつものことだ。ハムもチーズもすべて上質で、私にはこのガレットが美味くてしょうがない。しかし、この店ではこれだけではおさまらない。塩キャラメルと焼きりんごにアイスクリーム添のデザートガレットを半分ずつ食べて、コーヒーを飲まなくてはならない。
　他の客が帰った後、店の主人がテーブルを拭いているところを何とはなしに遠くから見ていたことがある。何度も何度も丁寧にしつこいほど拭きまわしていた。どうりで店の隅々まで清らかでピカピカしているわけだ。私は主人のこの姿を見て、さらにこの店が好きになった。もちろん細君もこの店の大ファンである。
（安曇野市穂高有明7686-1　0263-31-6969）