田園の憂鬱 / 佐藤春夫(新潮文庫)★★★
佐藤春夫は井上靖の師であるが、この人の作品を読むのははじめて。作風は意外にも幻想的であり、ときには耽美的でもある。都会のインテリ青年が田舎の古い家に住み、自然を賛歌したりノイローゼになり幻覚を経験するというような内容だ。私も田舎暮らしは合わないタイプである。しかし、ときには湖のそばの白樺の葉が心地よくそよぐ微風が吹き渡る高原に暮らしてみたいなどと夢想することがある。生活不便さや虫、蛇などを想像するとたちどころに現実的な自分に戻ることができる。(平成29年5月)