糖尿病、生活習慣病の専門医院 松本市・多田内科医院

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私の本の日記(3)

緑の色鉛筆 / 串田孫一
緑の色鉛筆 / 串田孫一(平凡社)★★
 串田孫一の「鳥と花の贈りもの」に感動し、この本を読んでみたが、どうもしっくりこない。この本は全体的に哲学的思考の匂いが強く、私はむしろこの作家の鳥や自然の詩情豊かな文章の方が好きだ。しかし、この中のエッセイの1つ「見ることについて」に注目した。私は小学校の自由研究で蟻地獄の幼虫からウスバカゲロウへの成長について取り上げ、全校生徒の前で発表したことがあるのでこの分野は少々詳しい。しかし、蟻地獄の漏斗形の巣の大小不同や穴の浅深の程度が幼虫の大きさの違いによるものと考えて来た。迂闊であった。筆者は、ある小学生の観察記録を見て感心したという。その小学生はその土を取ってきて、板の上にさらさらとこぼして山を造ってみたところ、穴の浅いところの土は盛り上がりが低くて、穴の深いところの土は高く盛り上がっていることを見つけ、土の粒の粗い細かいによることがわかった。その小学生はさらに、歯みがき粉やガラスの粒など、さまざまな粒で盛り上がりを試して、その傾斜と平面との角度を表にして、明らかにしたというのである。そして、筆者はこう述べている。「同じ人間の眼をもって1つのものを見ながら、その注意の向け方で、物はいろいろに見えるばかりでなく、うっかりしているために、私たちはどのくらい貴いものを見損なっているか、また目の前には常に発見されるべきものが沢山あることを、改めて思わずにはいられない。」(平成29年5月)

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