洞窟オジさん / 加村一馬(小学館文庫)★★
山形の田舎育ちである私だが、箱入り息子だったので、アウトドアの実力はまるでゼロである。もし、山の中に一人で放り出されたら、2日も経たないうちに死んでしまうであろう。自分にとって実現不可能な分野、たとえば、椎名誠の怪しい探検隊に憧れ、野田友佑とカヌー犬ガクの冒険などにはロマンを感じていたのであった。この本は自叙伝である。主人公は貧乏な両親に虐待されたために耐えきれず、13歳で家出し、山の中で犬と自給自足の生活を始める。洞窟の生活では蛇やこうもり、虫などを食べて生き抜くのである。成人するまで独力で生き、その後、川での生活に移ったりする。結局、43年もの間単独でサバイバル生活したつわものである。次第に人間社会と接触していくことになるが、お金とのかかわり合いや、人の親切との出会いの場面などはちょっと面白い。(平成29年4月)