素敵な日本人 / 東野圭吾(光文社)★★
題名に偽りあり。てっきり、日本人の民族性の秀逸さをテーマにした短編かと思った。あの東野もついに保守派となって真の国民的作家の道を歩み始めたのかと期待したのだが。果たしてその内容は?とくに統一性のない軽いミステリー系の短篇集で、素敵な日本人とはとても言えそうにもない人達が描かれていた。この題名は一種皮肉なニュアンスがあるのかなとも考えられる。しかし、さすがは東野である。1つ1つのストーリーは作家の特徴が良く出ていて読みやすく、それなりに楽しめる。9つの短編のうち最も良かったのは最後の「水晶の数珠」である。勘当された息子が、父の死後はじめて父の愛を知るという、やや感動的な話であった。(平成29年4月)