傷だらけのカミーユ / ピエール・ルメートル 橘明美 訳(文春文庫)★★★★
「その女、アレックス」「悲しみのイレーヌ」に続く3部作の最後の作品。「その女、アレックス」は「2015年私のベスト10」にも入った衝撃的な本だった。前2作同様、冒頭から息をのむような事件(というより犯罪)が勃発し、度肝を抜かれる。こうなるともう作者の術中にはまってしまい、先へ先へと我を忘れて読み進んでいかざるを得ない。そして、後半になると、この作者特有の〝意外な展開〟が繰り出されてくる。設定として、主人公が身長145センチたらずの辣腕警部であることが特異的だ。このようなスリリングな小説が国内で出てこないのはどうしてだろうか。(平成29年4月)