もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら / 工藤美代子(角川文庫)★★★★
ノンフィクション作家の工藤美代子の本「皇后の真実」「悪名の棺」(いずれも幻冬舎文庫)を最近読んだ。お化け物の本はタイトルに惹かれいくつか読んだことがあるが、どれも作為的なものを感じ途中で嫌になって放り出すことが多かった。しかし、この本は最初から違うぞという予感があった。なぜなら、この硬派の、決して若くはない作家のお化けの話だから期待できると思ったのだ。冒頭で、作家自身が自分の一番大事にしているモットーは「嘘を書かない、盗作をしない」ことであると宣言しているのである。自分の不思議な体験を少しの尾ヒレもつけないで、自分の体験した以外のことは一切書いていない。したがって、1つ1つの話は信用のおけるものであり、文の最後に載せている写真がさらに一層信憑性を加えている。私はこういう体験をしたことはないのでよくわからないが、この作家本人が「ああ、またか」いうふうに、摩訶不思議な事象に対してあまりにも鈍感であるところがいい。(平成29年4月)