糖尿病、生活習慣病の専門医院 松本市・多田内科医院

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私の本の日記(2)

命の器 / 宮本輝
命の器 / 宮本輝(講談社文庫)★★★★
 宮本の新刊本はすぐに買ってすぐに読むほど、私にとって重要な作家だが、エッセイをしっかり読むのは初めてだ。これはかなり若い時のエッセイである。自分の父親のエピソードが出でくると、その人物が彼の連作である「流転の海」シリーズの主人公松坂熊吾のイメージにぴったりと一致する。なるほど、あの作品は自伝小説だったのかと、初めて納得した。命の器とはたいそう大きなタイトルだが、その表題作には「人と人との出会いは・・・いわば宿命とか宿業である。」という意味深い文章が出てくる。さらに、「人と人とに結びつきというものは、自分という人間の核を成すものを共有している人間としか結びつかない。」「自分と言う人間を徹底的に分析し、自分の妻を、友人を徹底的に分析してみるとよい。出会いが断じて偶然ではなかったことに気づくであろう。」そして最後にこう述べている。「どんな人と出会うかは、その人の命の器次第なのだ。」と。このような言葉が40歳前の男から生まれてくるとは驚異だ。いくら掘っても掘り尽くせないほどの大きな山塊をこの作家は内蔵しているのかもしれない。(平成29年3月)

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