桶川ストーカー殺人事件 / 清水潔(新潮文庫)★★★
21歳の女子大生、詩織さんがストーカーに殺された。彼女は遺書をしたためていた。そこには「もし私が殺されたら、犯人は小松だ」と書かれてあった。友人たちにも同じことを何度も語っている。この状況ならばすぐにでも小松という男が逮捕されるはずなのに、そうはならないのである。埼玉県の上尾署は最悪の警察署だ。詩織さんと家族が生前、幾度も上尾署を訪れて告訴状まで出していながら、何もしてもらえなかったのだ。真犯人を警察よりも早く特定したFOKUS記者の清水潔の執念は凄まじい。犯人に対する怒りはもちろん、何も捜査しない上尾署や、詩織さんをあろうことか逆に貶める報道をするマスコミなどに対する怒りが正義の味方として立ちあがらせる力となったのだ。家族や友人からも信頼された清水記者の努力を称賛したい。最後に、清水記者の象徴的な発言を紹介したい。「詩織さんは小松と上尾署に殺された。」(平成29年1月)