井伊直虎 / 梓澤 要(角川文庫)★★
正月を挟んで、読み終えるのに3週間もかかってしまった。私にしては異常に長く、それはこの本が読み進むのがもったいないほどすばらしい本か、それほど熱中することができなかったか、のいずれかを意味する。平成29年度のNHK大河ドラマ「井伊直虎」を見ないと決めたことが、この本を手にするきっかけになったので、とにかく読破しようと一種大きな努力をしたのである。この物語は女城主という珍しさが最も注目されたところである。しかし、私はむしろ、今川と徳川に挟まれた弱小の井伊家がお家断絶という苦しい時代を乗り越えて、嫡流である直政少年を徳川に送り込み、四天王の一人といわれるまでにのし上がった出世話の方に興味をそそられた。歴史的には無名に近い地方豪族が多数登場して、登場人物の関係を理解することが難しかったが、著者は細部にまでよく調べ上げて書いたものだと感心する。別の本で読んだことだが、井伊直虎は実は男だったという。(平成29年1月)