草花たちの静かな誓い / 宮本 輝(集英社)★★★★
新刊が出るとすぐ買う作家の一人が宮本輝である。なにかしみじみとして、物語のどこかに謎を含んでいることが多いところがいい。著者は井上靖を尊敬しているという記事をどこかで読んだ気がするが、文体や文章の匂いが井上に似ているところがあり、むしろどこか模倣しているのではないかとさえ思われる。物語は、ロサンゼルスに住む亡き叔母が残した莫大な遺産を継いだ青年が、昔行方不明になった叔母の娘の謎を追うというものだ。ミステリーではないので、結果は途中で予想できてしまうが、どのような最終結末を用意してくれているのかが楽しみで、どんどん読み進んでしまう。読後、しばらくの間は後を引き、何かを考えなければいけないような気持ちになるが、しかし、その程度というものは井上を読んだ後のそれと比べるとかなり低いことを言っておかなくてはいけない。(平成28年12月)