総理の誕生 / 阿比留瑠比(文藝春秋)★★★
山口敬之著「総理」に引き続き、安倍総理の秘話物が出た。阿比留瑠比は産経新聞を代表する有名な記者である。山口敬之の本とは多少視点が異なっているようだ。山口は記者というよりもむしろ総理の友人に近い関係で、阿比留は安倍総理と同じ考え方、思想を共有する同志のような間柄なのであろう。実際、山口は他の雑誌で「安倍総理はいつも阿比留氏を意識して行動している」と述べている。重要な政治決断をする時、「阿比留さんはなんて言うかなあ。阿比留さんに呆きられないようにしなければいけない。彼に分かってもらえるようにしたい。」と総理は言っていたという。この本の中で、安倍は理念的な保守信条を持ちつつ、政治的行動はどこまでも現実主義を貫いていると指摘している。安倍自身「政治家は思想家であってはならぬ。政治は結果だ。」と発言しているのだ。米国の有名な研究者ルトワックが安倍のことを、生まれついての戦略家だと評価している。そのルトワックに、そういう人物は他に誰がいるか?と問えば、ただ一言「チャーチルだ」と答えたという。 (平成28年12月)