万葉集1日1首 / 花井しおり編(到知出版社)★★★★
私は高校時代、古典の教科書を読まずに虎の巻だけを見て試験を受けたので、古文どころか和歌が読めない人間になってしまった。長年の劣等感が心の片隅に居座り、それがずっと心の周辺を暗く圧迫している存在だった。1日1首の万葉集。なんという魅力的な響きだろう。何事も最初の1番から取り掛かりたい傾向、たとえば、モーツアルトやベートーベンのピアノあるいはヴァイオリンのソナタでも1番から順に聴いていきたいという私の性質には、この本はもってこいである。平成27年正月から今までの約2年間、原則的に1日1首をノルマにしてきた。いまだに解説を読まないと理解できないが、和歌の良さ、美しさ、楽しさといものが少しわかりかけた気がする。印象に残る歌は多いが、ホトトギスを歌ったものが多く、古の人々がこの鳥を愛していたことが意外な思いだった。私も実はホトトギスが好きだ。「ほととぎす 無かる国にも行きてしか その鳴く声を 聞けば苦しも」(弓削皇子)(平成28年12月)