獅子 / 池波正太郎(新潮文庫)★★★★
久しぶりに池波の小説を読んだ。面白い。私は池波小説を全制覇しているので、この本ももちろん数十年前に手に取っているはずだが、記憶はあいまいだ。平成28年はNHK大河ドラマ「真田丸」で盛り上がり、この12月最後のクライマックスを迎えようとしている。この時期のはるか40年後の事件がこの物語である。すでに隠居している93歳の真田信之がみずから、隠密や側近の右近らとともに、お家騒動で対立する幕府権力と対決するのである。百戦錬磨の信之の胸のすくやり方は読者を「してやったり!」と喜ばせる。さすが池波である。読者は息をする間もなく読み進むことになり、最終局面にきて意外な急展開にハッとさせられるのである。鬼平犯科帳全巻をそのうちまた読み返してみるつもりだ。もう7回目になる。(平成28年12月)