旬の自然観察 / 那須野雅好・丸山 隆・中田信好(市民タイムス)★★★★★
三人の著者の中の一人丸山 隆氏から署名入りでいただいた本である。松本・安曇野の季節ごとの旬の自然観察した写真をページ上部に、その解説をページ下部に載せている。対象は主として昆虫と野鳥であり、植物や動物まで及ぶ。まず写真に魅せられる。鮮明で美しいことはもちろんだが、ハッとする衝撃的な写真が多い。想像を絶するような忍耐と努力と執念、それに加えとびっきりの幸運を要したことであろうと思われる写真ばかりである。たとえば、アカゲラが樹をつついた後、虫が樹の中でどういう反応をしているかを、アカゲラが樹の枝に耳をくっつけて耳を澄ませている写真。クロアカバチが、ハチの毒で動けない自分より大きいバッタに馬乗りになって抱えて飛んでいるのだが、よく見ると、そのバッタの触角をしっかりと口にくわえて、まるで手綱をとっているような写真。さて次のページはどんな写真が現れてくるか、ワクワクしながらページをめくるのだ。写真の解説の文章も良い。ウィットとセンスとユーモアに溢れ、ときには豊かな詩情に満ち、大変楽しく読むことができる。野鳥をこよなく愛する丸山氏は、一人娘に凛とした青い鳥「コルリ」と命名したという。後年、二人でコルリを観察したり、結婚式のときのプロフィールに父親が撮ったコルリの写真を載せたりしたエピソードは感動的で、また微笑ましい。(平成28年12月)