小さな手袋・珈琲挽き(庄野潤三編) / 小沼 丹(みすず書房)★★★
一時、庄野潤三の本を集め読み漁っていた。それらの中に井伏鱒二がしばしば登場し、ときどき小沼 丹も出てくる。小沼 丹が庄野潤三の友人ということはわかったが、どんな作家なのかは分からなかったので読んでみた。イギリスに住んでいた時、庭に今こんな花が咲いたなどというはがきが庄野から良く届いて、ありがたかったと書かれていた。また、庄野の書いたあとがきには、庭の小さな出来事をちょっと言ってみたくなる友人である、と述べてあった。なんとうらやましい間柄であろう。この本は初期から順番に選ばれたエッセイ集で、しみじみとして心安らかに読んでいける話が続いている。庄野は小沼 丹の魅力を「・・・親しみと共感のうちにやがて深く、喜びと安らぎをもたらす・・・」と言っている。(平成28年11月)