糖尿病、生活習慣病の専門医院　松本市・多田内科医院

音楽への礼状 ／ 黒田恭一（小学館文庫）★★
　若いころ、車の中でNHKFMのクラシック音楽をかけると「こんにちは、黒田恭一です」という声がよく流れて来た。それは暗い響きだが知的な印象を受け、いかにも音楽評論家といった雰囲気が感じられた。しかし、決して悪印象ではなく、氏の誠実さが伝わってきて、この人の話をじっくり聴いてみたいのもだと思ったものだ。この本は丸善の地下の文庫本を「しらみつぶし」にしているとき見つけたものだ。「しらみつぶし」とは、書店の本棚を端っこから順番に１つ１つの本をチェックしていくもので、自分の知らなかった作家や良い本を発見する最良の手段である。この本は、氏の思い入れの強い音楽家への手紙という形式で書かれており、分野はクラシックからジャズまで及んでいる。何か新しい情報や今まで聴いたことがない音楽を発見できるのではないかと期待したが、残念なことに意欲をそそられる話はそこには見出せなかった。いつか私自身がこのような種類の本を書けたらいいと思う。（平成２８年１１月）