壁の男 / 貫井徳郎(文藝春秋)★★★
この作家のストーリーはちょっと不思議で奇妙なものが多い。家の壁に稚拙な、しかも派手な絵を描く中年男の物語だ。まるで子供が描いたような絵なのだが、田舎町の人々はこの男になぜか自分の家の壁に描いて欲しいと頼むのである。なにか人の心を惹きつける魅力のある絵なのだそうだ。すると、田舎の町のあちこちにこの不思議な絵が乱立してしまう。この男の過去には何か大きく暗いものが隠されていると想像することができる。実際、具体的に少年時代からの過去が明かされるわけだが、子供の病気とか夫婦問題など、ちょっと重く深刻な話題なので、相当考えさせられる。私はこういうテーマは苦手なので、そうとわかっていたら手にしなかったと思う。(平成28年11月)