糖尿病、生活習慣病の専門医院　松本市・多田内科医院

人は地上にあり ／ 出久根達郎（文春文庫）★★★★
　出久根達郎の本とはじめて出会った記念すべきこの本を再読した。１０年以上前、大名町のすでに閉店した鶴林堂書店の三沢さんという親しい店員に文庫本の解説目録をよくもらっていた。それをパラパラとやって面白そうな本を物色していたところ、この珍しいタイトルが目に留まったので三沢さんに取り寄せてもらった。この時から出久根達郎の本集めが始まった。彼は直木賞を取った有名な作家であると同時に、芳雅堂書店という古書店主でもあり、年４回「書宴」という有名な古書目録を発行していた。私は手紙でこれを送ってくれるように頼んだのであった。したがって、私は彼の愛読者であると同時に顧客でもあるのだ。年３～４冊の著者の新刊本には必ず一句と「多田久也様へ」という署名が書かれて送られてくる。一句とは、たとえば、「活字で洗われたまなこには一点の曇りもない」「体験から得た言葉は尊い」「赤まんま犬は一五でわれは古希」などというものだ。さて、この本はいろんな珍しい本を紹介する内容である。といっても、普通の書評ではなく、出久根氏の場合は、常にそうであるが、立派な１つのエッセイになっているところに特徴がある。私は生涯に１つでもいいから、こんなエッセイを書いてみたい。（平成２８年１０月）