惜別の賦 / ロバート・ゴダート 越前敏弥訳(創元推理文庫)★★★★
翻訳が下手な本ほど読みにくいものはない。なかにはそのまま直訳しているような酷いものまである。私の方がもっと上手なのではないかと思われる本もある。そういう本は1ページも読むことができない。しかし、翻訳が上手なミステリーほど面白いものはない。ことほど左様に翻訳は重要なのである。この本の翻訳はすばらしい。現在の事件と30年前の殺人事件との入り組んだ謎がとき解されていく物語である。登場人物が28人という複雑なストーリーだが、人物をゆっくりと確認しながら読み進めていくと、その展開のスリリングさに夢中になってしまう。出久根達郎が紹介した本で、私がいつも手元に置いてある「なんでもノート」にメモしておいたものをネットで中古品を注文したものだが、わざわざ取り寄せた甲斐があった本である。(平成28年9月)