糖尿病、生活習慣病の専門医院　松本市・多田内科医院

鳥と花の贈りもの ／ 串田孫一・文、叶内拓哉・写真（暮らしの手帖社）★★★★
　小海線の電車に乗り小淵沢駅で降りリゾナーレのブックカフェに行った時、細君がこの本を見つけ私にプレゼントしてくれた。串田孫一の本は初めて読んだ。左に写真、右に文という形の本である。文はエッセイというよりも全体的に詩情に溢れていて、むしろ散文詩と呼んだ方がよいかもしれない。野鳥との偶然の出会いを、私の感覚では到底思い及ばない感情を持って捉えている。ときにはお互いに見つめ合い、意識的に無視し合う。ときには秘密を語り合い、静かな冷たい目で突き放したりする。文章は美しいが予想外の表現が次々に現れ、それが哲学的な思考であるため、私にはすべての文章を理解することができない。それはそのはずである。後で調べてみたら、この人は哲学者でもあったのだ。哲学は私の最も苦手とする分野であるが、写真の美しさと不意を衝かれるような意外な表現が、私にもう一度はじめから読み返させる魅力になっているようだ。（平成２８年９月）