孔子 / 井上 靖(新潮社)★★★★★
この本を読むのは4回目だろうか。5回目、いや6回目かもしれない。4、5年毎に1回は必ず読まねばならないという思いで手に取る。そのたびに、今回が最後かもしれないし、5年後にまた手に取るかもしれないと考える。文庫本も持っているが、私はいつも単行本の初版のものを読む。しっかりと机と椅子に座って姿勢を正しこの本と向き合わなければいけないと思っている。「逝くものは斯くの如きか 昼夜を舎かず」「いまだ生を知らず、いずくんぞ死を知らん」このような孔子の言葉の解釈は人それぞれ異なるであろうが、それはそれで当然のことである。作者は自分自身の最晩年に到達した解釈を、孔子の死30年後に弟子の末席にいた主人公に語らせている。孔子の思想の中心核にあるのは「仁」であるという。多田家のお墓の墓石にはこの「仁」という字が刻み込まれている。(平成28年9月)